ストーリー
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想い出 |
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ここは、雨がしとしと降る夕暮れ時の公園。 ルーチェはベンチの下で震えていました。 ついさっきまで母親と一緒に暖かいカーペットの上でじゃれていたのに。 いつも可愛がってくれていた人が、ここに連れて来たのです。 その人はルーチェを置いたまま、去って行きました。 「まだ、帰れないのかなぁ。」 ルーチェはじっと待っていました。 しばらくすると、女の子がルーチェに駆け寄って来ました。 「ねえ、おかあさん見て、ベンチの下。わぁー、かわいい。猫の赤ちゃん。」 「あら、捨て猫ね。かわいそうに。」 女の子の母親が言いました。 「雨に濡れて、震えているわ。ねぇ、連れて帰っちゃダメ?」 「ダメよ。」 「そう・・・。そうだ、私のこの傘、猫ちゃんにあげる。元気でね。」 ルーチェは女の子が遠ざかる姿を、ずっと見つめていました。 |
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「シルビア、おいで。」
シルビアはめんどくさそうに主人の方へ歩いて行きました。 「シルビア。あぁ、なんて美しい、輝く毛並み。お前は最高の猫だよ。」 シルビアは力まかせに抱きしめられ、苦しくて思わず主人から離れました。 「あら、逃げないで。もう、わがままなシルビア。」 わがままな主人にわがままと言われ、シルビアはちょっと不満でした。 「そうそう、最高の雌猫にふさわしい、最高の雄猫を見つけたのよ。明日、お見合して子供をたくさん産んでね。」 シルビアは暗い気持ちになりました。 二人の兄弟がドマーニを押え付けていました。 「ドマーニ!おしおきだ!ひげを抜くぞ。じっとしてろ。えい!」 「フギャー!!」 ドマーニは痛さのあまり泣き叫びました。 「泣くな、おまえ雄猫だろう?」 「兄ちゃん。ドマーニのやつ、小さくなっちまった。」 母親が兄弟たちに言いました。 「早くー!車にのってー。荷物も全部つみ終わったから、出発よー。」 今日は引越の日です。 「行こう。」 「兄ちゃん、ドマーニ連れていくの?」 「だめだ。母ちゃんが今度の引っ越し先のアパート、たぶん、ペット禁止だって言ってた。さようなら、ドマーニ。」 「さようなら。これあげる、新しい住所書いてあるから。」 兄弟たちの乗った車は、ドマーニを残して遠ざかって行きました。 |
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ここは、とある下町。
小さな黒い影が、靴をくわえて、すばやく逃げ去りました。 「お待ち!この泥棒猫!」 女将さんが叫びました。 「あー、またあの猫だ。いつもの毛並みの悪い奴。本当に、どんな小さな隙間でもくぐっちまう。」 マジェスタは靴をくわえて、得意気でした。 「でも、何だって靴を片方だけ盗んだりするんだろう?人間様をバカにしてるよ!」 盗んだ靴をじっと見つめていたマジェスタは、なぜ靴を盗むのか自分でも分りませんでした。 でも、靴を見ていると、とても暖かく、懐かしい気持ちになるのでした。 思い出そうとしても、どうしても思い出せない。 なにか、とても大切な想い出があるはずでした。 |
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ロッキングチェアーに座ってるおばあさんの膝の上で、ロイスは気持ちよさそうに眠っていました。 「かわいいねぇ、ロイスや。ゴホッ、ゴホッ。」 ロイスはおばあさんの咳で目を覚ましました。 「私も遠い昔、もう何十年前になるかねぇ。私にも、お母さんがいて、よく子守歌を歌ってもらったよ。」 おばあさんは愛しそうにロイスの頭を撫でました。 「よーし、よしよし。 おやすみ。」 ロイスはおばあさんの膝に顔をうずめて、うとうとしていました。 「ゴホッ!うっ。くっ!薬!薬を取って お く れ・・・。」 おばあさんは、それっきり動かなくなりました。 しだいに冷たくなるおばあさんを、ロイスはどうする事も出来ませんでした。 |
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「ごらん、セフィーロ。今日は星がきれいだ。」
セフィーロが夜空を見上げると、たくさんの星が輝いていました。 「夜空を見ていると、何もかも、みんな忘れられるよ。」 アパートの一室で、一日中カゴの中に入れられて、外に出られるのはトイレの時だけ。 セフィーロはそんな生活が嫌になり、アパートを飛び出しました。 「本当に自由な気分だ。自由は最高さ。自分がここにいるのが不思議なくらいだ。」 ふとした事で知り合った男と、一緒に旅を続けているセフィーロは、自由だけれど、何か足りないと思っていました。 |
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少年が白い子猫を抱いて、公園にやって来ました。 公園のベンチに座り、白い子猫を撫でていました。 「ジュン、ジュンイチ、ジュンイチ?どうしたの?さっきから、考え込んでる。」 ミューは黙り込んでいる少年に問いかけました。 「ミュー。僕、ちょっと用を思い出した。いいか、ここで・・・ここで待っているんだぞ。」 少年はミューをベンチにおいて立ち去ろうとしました。 「ジュンイチ!私も一緒に行く!」 不安になったミューは、少年にすがり付きました。 「だめだ!」 少年はミューをベンチに戻しました。 「ミュー。僕の言うことが分からないのか?いいか、ここで目を閉じて、待ってるんだ。」 少年はミューを残したまま、ベンチを離れて行きました。 ミューは待っていました。 少年が戻って来るのを信じて・・・。 |
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三匹の子猫 |
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猫たちは、お花畑がある広場に来ました。 「ねえ、みんな。いい天気だねえ。」 「空が青いわ。」 「風が気持ちいいですなあ。」 「キャー素敵! なんてきれいな花でしょう。」 猫たちは花を取ろうとしました。 それを見たインテグラは猫たちに言いました。 「ちょっと待った!立て札がありますぞ。」 その立て札には(この花取るな)と書いてありました。 「この花、取るな。だって。」 マジェスタが言いました。 「こーんなにいっぱい咲いているんだから、一本ぐらい、取ってもいいわよね。」 シルビアが言いました。 「うん!一本なら大丈夫。」 「うん!一本だけ。」 猫たちは花に近付きました。 セフィーロが猫たちの前に立ちはだかって。 「だめだ!取ってはいけない。」 「そうですとも。」 インテグラも止めに入りました。 花を取りたい猫たちは、 「一本だけ。一本だけ!」 と言いながら、セフィーロを押し退けて花に近付きました。 |
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結局、反対した猫たちも、一緒になって花を取り始めました。 「きゃー!」 突然、ルーチェが叫びました。 「見て!この花。動いたわ!」 ミューは驚いて花から離れました。 「あっ!あの花も!」 「うわ!こっちも動いている。」 猫たちは花畑を遠巻きにして見ていました。 すると、花畑の中から 「ニャーオ」 と鳴きながら子猫が三匹出て来ました。 花を見ていた猫たちは、何が起こったのか理解できませんでした。 マジェスタがこわごわ近付きました。 「おい!みんな。この花たちには、ちゃんと尻尾があるぜ!」 |
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インテグラも近付いて、 「諸君!これは間違いなく、捨て猫です。」 三匹の子猫はこの花畑に捨てられていたのです。 「あなたたち、私たちに分かる言葉でしゃべるのね。」 と子猫が言いました。 「猫が猫の言葉でしゃべるのは当たり前よ。」 とミューが応えました。 「私たちが出会う人は、分からない言葉でしゃべる人たちばかりだったの。」 「だから、怖くて怖くて、ここに隠れていたの。」 セフィーロは子猫たちを花畑から連れだして、 「きみたち、よかったら僕たちの仲間に入らないかい?」 「仲間?」 「ぼくたちは冒険の旅をしているんだ。一緒に行かないか。」 子猫たちは、顔を見合せ、うなずきました。 ドマーニは子猫たちに聞きました。 「ところで、名前は何て言うんだい?」 子猫たちは、意味が分らず、首を横に振りました。 セフィーロは子猫たちを見ながら言いました。 「よし、僕が君たちに名前を付けて上げる。君はグレース、君はマリリン、君はオードリーだ。」 子猫たちはうれしそうに跳びはねました。 「さあ!出発だ!」 |
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ウンガロの罠 |
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川のほとりで二つの黒い影が何かを置いていました。 「おーい!こっちに来いよ。」 マジェスタの声に、黒い影はあわてて立ち去りました。 「見て!見て!」 「川だわ!」 「お日様の光に当たって、まるでサファイアを散りばめたようですわ!」 「サファイアって、なに?」 「青くて綺麗な石ですの。」 「そーんなの、俺たち野良猫にとっては、どうでもいいことさ。」 「さあ、行きましょう。サファイアのむこうには、エメラルドの湖があるかもよ。」 水が苦手なミューが言いました。 「じゃあ、川をわたるの?ちょと怖いわ。」 ほかの猫たちも不安がっていました。 「大丈夫だよ!よく見てごらん。浅瀬に大きな石が見えるだろう?それに飛び移って行くのさ。僕が手を引いてあげよう。」 セフィーロが川を渡ろうとすると、インテグラが言いました。 「ちょっと待った!また立て札がありますぞ。」 その立札には(危険!川を渡るな)と書いてありました。 マジェスタが立札を見ながら言いました。 「危険、川を渡るな?」 「危険?川を渡るなだって?」 猫たちは、どうしたものかと考えて来んでしまいました。 「大丈夫よ! 渡りましょう。」 シルビアが思い切って言いました。 「みんなで渡れば、怖くない!」 「よし!諸君!勇気を出して、渡ってみよう。」 猫たちはニャアニャア騒ぎながら川を渡って行きました。 ドマーニが溺れそうになりましたが、みんなで協力して、無事に渡り切りました。 |
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二つの影がぼそぼそと話しながら、何かを置いていました。 「兄貴、大丈夫かなぁ。」 「心配するな。見ただろう?猫たちの行動を。」 「でもなぁ。さすがに気が付くんじゃないのかなぁ。」 「あいつら規則やマナーが大嫌いなんだ。するな!と言われたら必ずやる。」 「でも、ほんとに性格曲ってるよなぁ。」 「人の事が言えるか。」 |
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「さあ、先へ進もう。」
セフィーロが猫たちを励ましました。 「諸君!しっかり歩こう。」 「僕たちは、強い猫なんだ。」 「あー。おいら、おなかペコペコ。」 ドマーニが座り込んでしまいました。 「あら?何かしら、これ。」 ミューが大きな袋を見つけて言いました。 「変なふくろ。」 「大きな袋だわねえ。」 猫たちは、袋をいじりながら、口々に言いました。 「中に何が入っているのかしら。」 「もしかして、食べきれないくらいの、ご馳走!?」 「入ろう!入ろうよ!」 |
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インテグラは、袋に入ろうとする猫たちを止めながら言いました。
「ちょっと待った!またまた立て札がありますぞ!」 その立札には(袋に入るな)と書いてありました。 「袋に、入るな?」 「袋に入るなだって?」 「どうしよう・・・。」 猫たちは袋を前にして、考え込んでいました。 「よし!入ろう!」 セフィーロが先頭を切って袋に入りました。 ほかの猫たちも入って行きました。 「ほおー。中はずいぶん広いぞ。」 「でも、真っ暗で、何も見えないわ。」 「もっと奥へ詰めろよ。」 「尻尾を踏まないで!」 「だれ!私のお尻をさわったの!」 「ひげをさわるなー!」 「ニャゴニャゴニャゴ」 袋に入った猫たちは大騒ぎです。 |
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「入った!入った!ほんとに入りましたね!兄貴!」 「言ったとおりだろう?わがままな奴らをだますのは簡単だ。」 黒い影たちは袋の口元に近付き、ヒモで縛りあげて、出口をふさいでしまいました。 「よーし、袋ごと猫たちを運ぶぞー!えーい!」 「うわー!きゃー!」 突然、袋が動きだして、猫たちは驚きました。 「何だ?今のは。」 とセフィーロが言いました。 「えい!よいしょ!よいしょ!」 黒い影たちは袋をどんどん引っ張って行きます。 「きゃー!助けてー!」 「ダメだ!出口がふさがれている!」 「まわりがだんだん小さくなっていく。しまった!これは罠だ!」 「えー!」 黒い影たちは、猫の詰まった袋を重そうに引きずって、運んで行きました。 いくつもの黒い影が袋に近付いて来ました。 |
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自由の代償 |
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ここは、ウンガロ大王の巣窟。 家来たちがウンガロの前に猫たちを連れて来ました。 黒い影はウンガロの家来たちだったのです。 「ウンガロー!バーカな子猫どもを、まんまと生け捕ったぞー!」 ウンガロは得意気に言いました。 「はっはっはっはっ。うわっはっはっはっはっはっ!」 家来たちはウンガロを称えて言いました。 「天に災い。地に争い。ウンガロ様に、お宝をー!」 「さあ、猫ども。働け!それ!力一杯、岩を掘れ!この俺様のために、世界で一番大きなダイヤモンドを掘り当てるのだ!」 「ハッハッハッハッ!ワッハッハッハッハッ!」 ウンガロはダイヤモンド鉱山の支配者で、働き手を探していたのです。 家来たちは口々に言いました。 「いやぁ。バカな猫どもをたんまり捕まえて、ダイヤモンド鉱山の働き手が、一気に増えたぜ。」 「おかげで、俺たちゃ楽ちんでさぁ。」 「その通り、これもそれもあれも、みんなウンガロ様の悪知恵・・・いっいや、罠のおかげ。」 「まったく、ウンガロ様には、だーれもかなわねぇ。」 「最高の支配者!王の中の王、ウンガロ大王様!ばんざーい!」 家来の一人が猫たちに向かって言いました。 「こら!猫ども!おまえたちもウンガロ様をたたえるんだ!」 |
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猫たちは、無視しました。 「お前たち、腹が減っているだろう?」 ウンガロはそう言うと食べ物を猫たちの方へ投げました。 猫たちは争って食べ物に近付きました。 「ゴホン!」 インテグラの咳払いを聞いて、猫たちは、ぐっと我慢しました。 そう、誇り高い猫なのですから。 ウンガロが言いました。 「いつまで、やせ我慢が続くのかな?誇り高き猫たちよ。しかし、誇りを食べては、生きてはゆけんだろう。」 猫たちは、ぐっとこらえていました。 「この俺様の言うことをおとなしく聞けば、世界で一番大金持ちの、このウンガロ様の家来にしてやるのになあ。」 そこへ、三匹の子猫が連れて来られました。 猫たちは、それを見て、初めて子猫たちがいなかった事に気付きました。 「こっちへ来い!ウンガロ様の前で、歌を歌うんだ!」 「キャー!止めて!いやよ!」 「助けて!セフィーロ!」 それを見ていたセフィーロは我慢できずに立ち上がりました。 「放せ!嫌がっているじゃないか!」 セフィーロは家来から子猫たちを奪い取りました。 「何だと!生意気な奴め!」 セフィーロは家来たちに、こてんぱんにやっつけられてしまいました。 「俺たちに逆らうと、こういうことになる。思い知ったか!セフィーロとやら!」 「それでは猫たち、明日もよろしく頼むぞ。俺様のために、力一杯働くんだ。いいか!これは命令だ!」 二人の家来を見張りに残して、ウンガロたちは去って行きました。 |
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猫たちは家来に聞きました。 「あのー。私たち、いつまでここで働くんですか?」 「死ぬまでさ。」 「ええー!うわぁー!そんなー!あーん!」 「うるさい黙れ!俺は猫が大嫌いだ!小さい頃、俺は猫たちに、殴られ、蹴られ、かじられ、さんざんいじめられたんだ!」 猫たちは意外な言葉に、あっけに取られていました。 「その時、俺を猫から助けてくれたのがウンガロ様だ。」 見張りの家来たちがどこかへいなくなりました。 猫たちだけが残されました。 |
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「自由、自由って、なんだろう。ああ、星がきれいだ。」
「もう、だめだ。」 「とても、逃げられない。」 「あんな袋に入らなければ良かった。」 「あーん。あたし本当は入りたくなかったのよ!」 「こんな生活、死んだ方がましだわ。」 「これじゃ、人間に飼われていた頃の方がずっとましだ。時々、子供たちにひげを抜かれたけど、毎日ご飯をおなか一杯食べられた!」 「こんな所で、好きな本も読めずに。」 |
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「私、公園でジュンイチをずーっと待っていれば良かった。」 「あんた、まだそんなこと言ってんの?ミューはね、捨てられたんだよ!だって、ミューは待ったじゃないの何日も何日も。ああ、でもミューはいいな好きな人がいてさ。私、好きになるって、どんなことか分からない。私、産まれてすぐ、捨てられたんだよ。誰にも、かわいがってもらった事なんて無いの!」 |
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「俺だって、似たようなもの。誰にもかわいがってもらった事なんてない。代わりに、よく悪さをしては人間たちをからかったものさ。町中のみんなが俺の盗みの技に、あきれたり、くやしがったり、うらやましがったり。ハハハ、 誰かに俺のこと、見ていて欲しかったのさ!」 |
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「シルビアのご主人様は、シルビアのこと、うんざりするほど、かわいがってくれたわ。頼みもしないのに結婚相手まで用意して。でも、あの頃のくらしの方が、ここよりは ずっと良かったってことが分かったわ。ここでは、家出することもできないんだもの!」 |
| 「僕のご主人。その人は僕のこと、兄弟って呼んでたけど、彼の生き方にあこがれて、僕も同じように家出してみた。でも、人間と猫では、こうも運命が違うのか!猫は一人では生きられないのか!」 | ![]() |
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「私のご主人様は、ある日、動かなくなったんです。一週間そばにいたんですけど、目が覚めないんです。そして、ご主人様のお友達がやってきて、今日からロイスの新しいご主人になってあげるって言われても、私、私、ご主人様がどうなったか気になって・・・。」
猫たちの話しを黙って聞いていたインテグラは言いました。 「みんな、希望を捨ててはいけない。どんな時でも自分をはげますんだ。さあ、楽しいことを考えて。」 猫たちは楽しかった頃を思い出していました。 「ああ。」 「家に帰りたい!」 「戻りたい!」 「楽しかった、あのころに!」 |
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希望 |
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夜もふけて、猫たちは眠りにつきました。 ロイスの耳元で、あの懐かしい声が聞こえました。 「ロイス、ロイスや。」 ロイスは、ハッとして起き上がりました。 「元気をお出し。いいかい、信じ続ければ、必ず願いはかなうよ。信じること、信じることですよ。」 「ああ、ご主人様。私、信じるわ!」 ロイスはそのまま眠りにつきました。 |
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何かの気配を感じてミューがふっと起き上がりました。 「ミュー、僕だ。こっちを向いて。ミュー、君は白百合のように美しい。無垢な心で、精一杯きれいに咲いている。そして、幸せにしてくれる。」 「誰を?」 「もちろん僕さ。」 「ジュンイチ!あなたが好き!」 「ジュンイチ、どこまでも、いつまでも、私を離さないで・・・。」 ミューが我にかえると、そこには誰もいませんでした。 |
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立ちつくすミューに、気付いたルーチェが言いました。 「ミュー、どうしたの?」 「ミュー。」 マジェスタも心配そうに言いました。 ミューは思いつめた顔をして言いました。 「ああ、私、ジュンイチに会いたい!もう一度、あの公園に戻って、ジュンイチに会うの!そして、二人で散歩したり、手をつないで歌ったりするの。そうして、二人一緒に、ずっと、ずっと、幸せに暮らすの。」 「私だって、一度でいいから、誰かを好きなってみたい。大好きな人に、優しく抱きしめて欲しいの。」 「ルーチェ・・・。」 「シルビアの結婚相手は自分で見つけたいの。」 「暖かい部屋で眠りたい。」 「あの町に戻れるんだったら、俺、誰かの役に立ちたい!」 「そうだ!」 「力を合わせて!」 「みんなで力を合わせて!」 「誰かの、役に立ちたい!」 「みんなの、役に立ちたい!」 「みんなで、力を!」 |
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猫たちの願いに応えるように、夜空が光り輝きはじめました。 その光の中から、銀色に輝く美しい猫が現われました。 「女神様だわ! 見て!」 「私の姿が見えますか?私は、あなた達をずっと見守ってきました。どんな時でも猫としての誇りを失わない、あなた達の味方です。」 そう言うと、銀色の猫は光の中に消えてゆきました。 |
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「あれ、なに?」 ミューがお酒の瓶に気付きました。 銀色の猫が立ち去った後に、お酒の瓶が残っていたのです。 「とても、きれい。」 ミューはお酒の瓶を手に取って、見つめていました。 すると、どこからともなく声が聞こえて来ました。 「さあ、このお酒をウンガロに飲ませてごらんなさい。このお酒を飲んだ者は、してはいけないことをしてみたくなるのです。」 「ありがとうございます。」 インテグラは思わずつぶやきました。 気を取り直したセィーロは 「みんな、僕たちは強い猫なんだ。力を合わせて、作戦を立てよう。」 と言いました。 |
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ウンガロの最期 |
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ウンガロと家来たちが酒盛りをしています。 猫たちは召し使いの様に、お酒をくんだり、食事の世話をしています。 「さあ。猫ども、踊れー!」 ウンガロが言うと女猫たちは素直に踊りはじめました。 「おい!酒だ!酒が足りんぞ!」 「はい。今すぐお持ちします。」 「おっ。今日は猫ども、よく気がきくぜ。」 「ついに誇りも失ったか。ハッハッハッ。」 ミューは例のお酒を持って来ました。 「あら?そのお酒。」 女家来はミューが持って来た酒瓶を取り上げて言いました。 「いつもと違うわ。何なの?これ。」 「めったに手に入らない美味しいお酒です。」 「本当?」 「私たちをだましているんじゃないの?」 「とっ、とんでもない。」 「ウソだと思うんだったら、私、味見してみます。」 「ちょっと待って!私たちのお酒よ!」 「あら、私が最初に見つけたんだから。私のお酒よ!」 「なに言ってんのよ!私が先なの!」 「いやだひどい!私が先よ!」 「あんた、何様だと思ってるの?」 「やったわね!」 |
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女家来たちが酒の奪いあいで喧嘩をはじめました。 ウンガロはしばらく我慢していましたが、 「うるさい! おまえたち!」 と言って、酒瓶を取り上げました。 「こんな酒など!」 ウンガロが酒瓶を地面に叩き付けようとすると、セフィーロがあわてて言いました。 「最高の支配者!」 猫たちも一緒に 「王の中の王!ウンガロ大王様、ばんざーい!」 ウンガロは多少機嫌がなおったのか。 「わしに一番についでくれ。」 と言って例のお酒をグイッと飲み干しました。 「ウンガロ様、いかがでした?」 とミューが聞きました。 |
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「うまい!不思議な味だ。もう一杯くれ。」
それを聞いて、家来たちも奪いあうように飲み干しました。 猫たちは、飲み干す様子をじっと見つめていました。 セフィーロがうなずくと、子猫が立札を持って来ました。 立札には(猫を逃がすな)と書かれていました。 「これを見て!」 家来たちは一斉に振り向きました。 「猫を、逃がすな?」 家来たちはプラカードを見たとたん、頭を押さえて苦しがりました。 家来の一人が地図を出しながら言いました。 「猫たち、この地図にはウンガロダイヤモンド鉱山の場所も、袋の罠を仕掛けた場所も全部書いてある。このまわりは切り立った崖ばかりだが、地図の通りに帰れば安全だ。」 |
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もう一匹の子猫が、また立札を持って来ました。 立札には(ウンガロを殴るな)と書かれていました。 「これを見て!」 「ウンガロを、殴るな?」 家来たちは立札を見た途端、ウンガロを殴り始めました。 「ウンガロ様!お許しを!」 「体が!勝手に動く!ええい!日頃の恨み!」 「ごめんなさーい!」 「あーやだ!どうしよう!」 三匹目の子猫が、またまた立札を持って来ました。 立札には(崖から飛び降りるな)と書かれていました。 「みんな!これを見て!」 「崖から、飛び降りるな?」 立札を見た家来たちは引っ張られるように崖の方へ近付いていきました。 「がっ崖はどこだー!」 「気を付けろ!」 「しっかり飛び降りるんだ!それっ!」 「ウンガロ様ー!」 |
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家来たちは次々に崖から飛び降りました。 「おっおまえたち!どうしたんだ!かっ体が!勝手に!」 ウンガロはもがきながら崖に引き寄せられていきました。 「うー!頭が!ああ、なっ何も考えられない!ああー!しっしまったー!ウーンガーロー!」 断末魔の叫びを残して、ウンガロは崖から落ちてゆきました。 猫たちは飛び上がって喜びました。 「やったぁー!」 「我々はついにウンガロをやっつけだぞ!」 「えいえいおー!」 |
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別れ |
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ドマーニが遠慮がちに言いました。 「あのー。みんな、おいら、おいら、一緒に暮らしていた子供たちの所に戻ってもいいかい?」 するとインテグラが言いました。 「よかろう。私も、もう少し勉強しなおして、野良猫たちの学校をもう一度建てなおしますぞ。しかし、人間も猫も言葉に惑わされることが多いですな。それでは諸君!また会おう!」 「シルビアのご主人様が心配していると思うから・・・、 戻るわ。」 セフィーロがシルビアに走り寄って言いました。 シルビア、君の気に入る結婚相手が見つかるといいね。」 「ええ、ありがとう。」 ロイスが言いました。 「私も新しいご主人様の所に戻ります。大好きだったご主人様のお友達ですもの。」 ミューはロイスに駆け寄って手をにぎりながら言いました。 「がんばってね。ロイス。」 |
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セフィーロも決心したように言いました。
「僕もご主人と、もう一度自由な旅をしてみるよ。」 すると、子猫たちがセフィーロにすり寄って 「ニャオーン。」 と鳴きました。 「君たちも、ついてくるかい?」 子猫たちは、セフィーロにしがみつきました。 「大丈夫。こんなかわいい子猫ちゃんたちなら、ご主人もきっと大喜びさ。さっ、行こう。」 マジェスタはセフィーロに手を振って言いました。 「元気でな!」 「マジェスタも元気でな!」 ルーチェはもじもじしながら、申し訳なさそうにミューに言いました。 「ゴメンね、ミュー。私、私、マジェスタと一緒に・・・。」 マジェスタはルーチェの手を取って言いました。 「元気でな!ミュー!」 ミューはうろたえて 「ちょっと!ちょっとみんな!待って!行っちゃうの?私だけ残して。待ってー!」 |
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信じること |
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ここは、ミューとジュンイチが別れた公園。 ミューは公園に戻って来ました。 「やっぱり私、ここに来た。でも、だーれもいない。お月様と、ミューだけ・・・。」 ミューは力なく、しゃがみ込みました。 しばらくすると、遠くから聞き覚えのある声が聞こえて来ました。 ミュー、はっとして顔を上げ、きょろきょろ見渡しましたが、やっぱり誰もいませんでした。 「ミュー!」 少年がミューに駆け寄って来ました。 「ジュンイチ!」 ミューは少年に飛び付きました。 少年はミューをしっかりと抱きしめました。 「ゴメンね、ミュー。もう絶対に、一人にしないよ。」 「ジュンイチ・・・。」 ミューの目からキラキラと涙があふれていました。 |
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「ミュー!」 少年がミューに駆け寄って来ました。 「ジュンイチ!」 ミューは少年に飛び付きました。 少年はミューをしっかりと抱きしめました。 「ゴメンね、ミュー。もう絶対に、一人にしないよ。」 「ジュンイチ・・・。」 ミューの目からキラキラと涙があふれていました。 |
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